静寂に咲く偏見の花 – 聴覚障害と共に生きるということ
この世界は、音で溢れています。鳥のさえずり、風の音、街の喧騒。そして、言葉。しかし、私にとって、それらの音は、厚いガラスの壁の向こう側にあります。私は、生まれつき耳が聞こえない、聴覚障がい者です。
多くの人は、「聞こえない」ということを、ただ単に「音が聞こえない」状態だと捉えているかもしれません。しかし実際には、「聞こえない」ことから生じる困難や、社会の偏見という壁にぶつかる場面が、数え切れないほど存在します。
このブログでは、私が実際に経験した差別や、聴覚障害に対する社会の偏見について、赤裸々に綴っていきます。
1. 「聞こえない」ことが、こんなにも不利になるなんて…
社会生活を送る上で、「聞こえない」ことは、想像以上に大きなハンディキャップとなります。情報収集の遅れ、コミュニケーションの困難、そして、就職、人生の岐路においても、見えない壁に阻まれることが少なくありません。
経験談１：就職活動 – 履歴書の「聞こえない」という文字が、私を阻む
就職活動は、誰もが経験する人生の岐路です。しかし、聴覚障がい者にとって、それは高い壁を乗り越える挑戦でもあります。履歴書を送っても書類選考で落とされることがほとんどで、面接に漕ぎ着けても、「接客は難しいでしょう」「周りの人とコミュニケーションを取るのは難しいのでは？」といった言葉を浴びせられ、門前払いをされることもしばしば。
健常者であれば当たり前に得られるチャンスが、聴覚障がい者というだけで、いとも簡単に奪われてしまう現実に、私は何度も絶望感を味わいました。
経験談２：病院での診察 – 医師の言葉が理解できず、不安に押しつぶされそうになる
病院での診察は、誰にとっても不安がつきものです。しかし、聴覚障がい者にとっては、その不安は計り知れません。医師の説明は、早口で専門用語も多く、聞き取ることができません。筆談をお願いしても、忙しいからと断られてしまうことも…。
自分の体の状態が分からず、不安な気持ちを抱えたまま診察を終えなければならない。それは、とても辛い経験でした。
経験談３：電車内でのアナウンス – 緊急時の情報が得られず、恐怖に慄く
電車に乗っている時、突然の車両トラブルが発生することがあります。そんな時、健常者であれば、車内アナウンスで状況を把握し、落ち着いて行動することができます。しかし、私にはアナウンスは聞こえません。
もし実際に起きたら周りの乗客がざわつき始め、何が起きているのか分からず、ただただ不安と恐怖に駆られるばかり、情報を得られないことの怖さを知ることになるだろう。
2. 無理解が生む「言葉の刃」 – 心を深く傷つけられる差別や偏見
聴覚障がいに対する社会の理解は、まだまだ十分とは言えません。無理解からくる心無い言葉や、偏見に満ちた態度に傷つけられることも少なくありません。
経験談４：飲食店で – 「耳が聞こえないなら、最初から言ってくださいよ！」と怒鳴られる
友人と飲食店に入った時のこと。注文を取ろうとしてくれた店員さんに、「すみません、耳が聞こえないので…」と、ゆっくりと手話で伝えました。すると店員さんは、露骨に嫌な顔をし、「耳が聞こえないなら、最初から言ってくださいよ！」と、大声で怒鳴ってきたのです。
店内は騒がしく、私の声は店員さんに届いていなかったのかもしれません。しかし、だからといって、怒鳴ったり、差別的な言葉を浴びせる権利は、誰にもありません。
経験談５：アルバイト先で – 「障がい者は邪魔だから、裏で仕事して！」と冷たく言い放たれる
アルバイト先で、商品の陳列作業をしていた時のこと。近くにいた社員に、「おい、障がい者は邪魔だから、裏で仕事して！」と、冷たく言い放たれたことがあります。
私は、精一杯の力で、周りの人に迷惑をかけないように働いていました。それなのに、「障がい者」というだけで、一方的に排除しようとするその態度に、強い怒りと悲しみを感じました。
経験談６：街ですれ違いざまに – 「かわいそう…」「大変だね…」と同情の眼差しで見られる
街を歩いていると、すれ違いざまに、ジロジロと見られることがよくあります。そして、「かわいそう…」「大変だね…」と同情の眼差しで見られることも少なくありません。
もちろん、悪意のない言葉であることは分かっています。しかし、憐れみの視線は、私の心を深く傷つけます。
3. 静寂の先にあるもの – 聴覚障がいと共に生きるということ
私は、「音のない世界」しか知りません。しかし、だからといって、不幸だと思ったことはありません。
豊かな感性、繊細な感受性、そして、何事にも諦めずに努力する強い心。聴覚障がいと共に生きる中で、私は、健常者にはない多くのものを得ることができました。
そして、聴覚障がいに対する社会の偏見をなくしていくために、私は、これからも、自分自身の言葉で、自分自身の経験を語り続けていきたいと思っています。
このブログを読んでくださった方が、少しでも聴覚障がいについて理解を深め、偏見のない優しい社会が実現することを願ってやみません。
コメント